ライフネット生命はヤバいのか。調べてみました。

先日、ライフネット生命の岩瀬社長によるfacebook投稿が色々議論を呼びました。

newspicks.com

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これまでの生命保険の加入が煩雑だったので、ネット生保が生まれた、といっても過言ではないにもかかわらず、「少しくらい手続きが面倒でも」にはビックリしました笑。岩瀬社長のお考えが良いか悪いかはここでは取り上げず、ライフネット生命の業績がヤバいのか、5月に発表された決算説明資料を通して見ていきたいと思います。

 

各指標は着実に増加している。

 事業会社では、売上高、売上総利益、営業利益などが登場しますが、生命保険会社の会計では、経常損益が主な指標となります。経常収益には①保険料収入、②資産運用収益があり、経常費用には①保険金・年金・給付金などの支払い、②責任準備金繰入金、③資産運用費用、④事業費、などがあります。

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さて、ライフネットの決算を見てみると、経常損益(保険業第113条繰延資産償却費考慮前経常損益)は減少していますが、2年連続で黒字です。生命保険は毎月(もしくは毎年)保険料が発生するので、新契約だけでなく保有契約件数も重要です。保有はYoY+6%と微増。ここで注意しないといけないのは、生命保険会計の場合、新契約をいただくと、顧客獲得単価など費用を初年度に計上しなくてはなりません。つまり1年目はキャッシュインはありながらもP/L上では、赤字になりやすいということです。新契約件数が伸びると費用が増え、利益を押し下げる、事業会社と違い、利益に反映されるのに時間がかかります。現状では新契約件数はちゃんと伸びているので良しとしましょう。

※保険業法113条は下記引用を参照してください。事業会社でいうところのEBITDAみたいなものです。

    (事業費等の償却)
第百十三条      保険会社は、当該保険会社の成立後の最初の五事業年度の事業費に係る金額その他内閣府令で定める金額を、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合において、当該保険会社は、定款で定めるところにより、当該計上した金額を当該保険会社の成立後十年以内に償却しなければならない。

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 新契約件数が伸びている背景には、どうも広告費を相当かけたようです。決算短信を見ると、広告費はYoY+38.5%増です。わたしはあまりテレビを見ないので全く知りませんでした汗。

前期(2017年3月期)は、資本提携しているKDDI社との連携で「auの生命ほけん」を販売したり、 「earth music&ecology」などのアパレルブランドを展開する株式会社ストライプインターナショナルと提携し、ストライプ社がライフネット生命の女性向け保険商品「新じぶんへの保険レディース」を取り扱っています。残念なのは、ネット生保を謳っていながらやはり対面営業によって新契約件数が伸びているということです。やはり日本人はなんだかんだ言いながら、人に言われて保険に加入するのが多いようです。すこし話がそれますが、おもしろいことに、生命保険協会が出している、「生命保険の動向2016」によると、個人保険の新契約件数は1,988万件(前年比102.5%)、保有契約件数は、1億6,011万件(前年比105.5%)となんと増えていました。生命保険に入るのはもったいない、公的な保障で十分だ、という意見をネットで数多く見てきましたが、現実はまだ変わっていないようですね。

 

結局ライフネットは大丈夫なんでしょうか

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上の表に三利源が乗っています。営業のために広告費を多く使っているので費差損が出ているのは理解できます。重要なのは死差益が順調に増加していることです。各保険会社は保険数理人(アクチュアリー)を抱え、彼ら彼女らの計算のもと保険料を計算しています。この精度が上がってきていると思われ、これは今後の収益に大きく影響を及ぼします。また、支払い余力を示すソルベンシーマージン比率は2,723%と国内漢字生保をはるかに凌駕しています。結論として、私の考えでは、設立から期間が短く、保有件数(全体のパイが少ない中)新契約が増えると、費用が増加し、赤字が続くという減少に陥っているだけであり、年数が増え、保有件数が増えると、保険会計上利益が増えていくであろうと思われます。しかしながらこのビジネスモデルが持続可能だとは思いません。国内人口は確実に減っていき、生命保険に加入することは当たり前と考えている世代はどんどん少なっていきます。今後はInsurTechのスタートアップ企業をM&Aして、他の生保が今のモデルにあぐらをかいているうちに、独自の戦略を打ち立てるべきです。海外に市場を求めることも当然必要だと思います。岩瀬社長ぜひ頑張ってください。

 

※著者は以前、国内漢字系生命保険会社の総合職として勤務しており、その営業現場に愕然とし将来が見えなくなったので転職しました。